悪魔のようなアナタ【完】
――――5分後。
狭い給湯室の中で灯里はじりじりと後ずさっていた。
目の前には魔王。
恐怖のあまり言葉も出ない灯里を、玲士の綺麗な瞳が楽しそうに見下ろす。
「……っ……」
「どこまで行く気?」
トンと壁に背をぶつけた灯里に玲士が唇を歪めて笑う。
灯里は蒼白な顔で玲士の顔を上目遣いで見上げていた。
――――甘かった。
コイツがタダで手伝ってくれるなんて、あるわけがない。
呑気にお礼でもなんて考えた自分が甘すぎた。
「壁でもすり抜けるつもり?」
「……」
「すり抜けてもいいけど、ここ3階だからすり抜けた瞬間、墜落するよ?」
玲士はうっすら笑って言う。
まさに『袋の中のネズミ』だ。