悪魔のようなアナタ【完】
睨み上げた灯里に玲士はうっすらと笑う。
「ミジンコのほうがまだマシかな? 少なくともひとつのことはできる。単細胞だからね」
「まだ言うのアンタ……」
「そのデータ、見るとこ間違ってる。そっちじゃない」
玲士は灯里の後ろから手を伸ばし、ノートパソコンの画面に触れた。
節ばった細く白い指先が画面をなぞる。
椅子に座った灯里の後ろから、玲士は立ったままじっと画面を覗き込む。
後ろからふわりと香る甘いウッドノートの香りに灯里はドキンとした。
「これは一昨年の実績データ。今見るべきはこっちの去年のデータ」
「……」
「ついでに言うと数式も間違ってる。これじゃいくら入力しても計が合うわけないよ」
玲士の指摘に灯里は目からうろこが落ちる思いだった。
データも数式も間違っていたなんて……。
それではいくらやっても合うわけがない。
「初歩の初歩だよ。3年目でコレって、大丈夫なの? お前」
「……」
「新入社員研修にもう一回参加してきたら? ちょうどこの時期やってるんじゃないの?」