悪魔のようなアナタ【完】
玲士の朝の湖を映したかのような透明感のある瞳が灯里を射る。
黒く長い睫毛も、完璧なラインを描く頬も、桃花のような唇も……。
こうしてみると、こいつがとんでもない美形だというのはさすがの灯里でもわかる。
「ちょっと、近付き過ぎなんだけどっ!?」
「そう? こんな程度でそこまで怯えるなんて、……お前ひょっとして、経験ない?」
「……っ!」
灯里の頬がカッと朱に染まる。
経験がないのは確かだが、この状況でそんなことを言うか!?
と無言でブルブルと肩を震わせる灯里を、玲士は目を眇めて面白そうに見下ろす。
「あるわけないか。ミジンコだもんな」
「……っ、あのねえ……っ」
「ひょっとしてキスもまだ? 本当に全く経験ないわけ?」
灯里はさらに頬を染め、喉を詰まらせた。
まさかそんなこと、よりによってコイツの前で素直に言えるはずがない。
無言の灯里の前で玲士の視線がさらに強くなっていく。
探られるような鋭い視線に灯里はヒィィと内心で叫んだ。