悪魔のようなアナタ【完】



……やがて。

玲士はスイと灯里の正面に顔を近づけた。

その距離、わずか10cm。

灯里の目前にある玲士の瞳に愉しげな光が浮かぶ。

灯里は凍りついたようになすすべもなく玲士を見上げていた。


「そうか。じゃあおれが、お前の初めてを全部もらうってのもいいかもな」

「……は?」

「これだけ貸しがあるんだ。それぐらいで丁度いいでしょ?」


玲士の瞳がじっと灯里を見つめる。

――――魂を吸い取られそうな瞳。

灯里は慌てて顔を背けて叫んだ。


「なっ、なにそれっ! 冗談でしょっ」

「でもお前がおれにできることって、それぐらいしかないんじゃない? 他に何かある?」

「……うっ……」

「じゃあ手始めに。キスからいくか」


言葉と共に玲士の掌が灯里の両頬を包んだ。

強引なのにどこか優しいその手付きに、灯里の胸が一瞬トクンと高鳴る。


玲士の手が灯里の顔をくいと上向かせる。

灯里はヒィッと息を飲んだ。



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