悪魔のようなアナタ【完】



「ちょ、ちょっと!?」

「早く目瞑りなよ。本当に色気のカケラもないね、お前」


玲士は言いながら、長い睫毛を伏せてそっと顔を傾ける。

しだいに近づくその顔に灯里は背筋を固まらせ、反射的に目を瞑った。


ファーストキスなのに……。

まさか、こんなところで……。


「……っ」


灯里の目尻にじわりと涙が滲む。

突然のことに思考が追い付かない。

――――このまま魔王に頭っからバリバリと食べられてしまうのか?

灯里は泣きそうになりながら必死にぎゅっと目を瞑っていた。


「…………」

「……っ……」

「…………」

「…………」

「…………やっぱやめた」

「……へ?」



< 93 / 350 >

この作品をシェア

pagetop