悪魔のようなアナタ【完】
「ちょ、ちょっと!?」
「早く目瞑りなよ。本当に色気のカケラもないね、お前」
玲士は言いながら、長い睫毛を伏せてそっと顔を傾ける。
しだいに近づくその顔に灯里は背筋を固まらせ、反射的に目を瞑った。
ファーストキスなのに……。
まさか、こんなところで……。
「……っ」
灯里の目尻にじわりと涙が滲む。
突然のことに思考が追い付かない。
――――このまま魔王に頭っからバリバリと食べられてしまうのか?
灯里は泣きそうになりながら必死にぎゅっと目を瞑っていた。
「…………」
「……っ……」
「…………」
「…………」
「…………やっぱやめた」
「……へ?」