悪魔のようなアナタ【完】
「晃くんは、『神園晃人』。うちの新しい取締役。私の昔の幼馴染なの」
「……幼馴染?」
「10年前まで私の家の隣に住んでた。だから『晃くん』って呼んでるの」
灯里の言葉を聞いた瞬間、玲士は目を見開いた。
信じられないといった目で灯里を見る。
灯里は玲士の腕をそっと外し、腕囲いから出た。
呆然とした様子の玲士に、灯里は少し笑って言った。
「でも会社では秘密にしてるの。昔はどうあれ、今は取締役とヒラ社員だからね」
「……」
「だから水澤くんも他の人には言わないで。お願い」
両手を合わせ、灯里は言った。
ふと腕時計を見ると、もう12:58だ。
急いで下に戻らなければいけない。
「じゃあねっ、水澤くん」
灯里は慌てて踵を返し、給湯室を出て階段の方へと駆けていった……。