永遠の愛

病室に移動して、手術の手続きとかなんだとか訳のわからない事ばっかを告げた医師が姿を消した後、頬を伝った涙にそっと触れた。


「…ごめん、美咲」


不意に聞こえた声。

いつから居たのであろうか分からない翔の声が低く悲しげに聞こえた。


「隠してたの?」


足音が背後っで止まったと同時に、あたしはポツリと呟く。


「5年前。美咲が旅立って1カ月した後、お母さんの病気が発覚した」

「……」

「初期症状で手術したら助かるって言う状態で――…」

「葵も!!諒ちゃんも!!みんな知ってたの!?」

「あぁ」

「何でっ、何でよ!!おかしいでしょ、それ?あたしだよ?あたしのママだよ!?なのにあたしだけ知ってないっておかしいでしょ!?」


伝う涙のまま振り向く先には悲しそうにする翔がいた。


「行ったばかりの美咲に言う事なんか出来なかった。ましてや旅立ってまだ一カ月。美咲に言うと大切な夢壊れるんじゃねーかって思って…」

「だからって何でそーなるの?別に夢なんて壊れてもいい。あたしの事なんてどうだっていい!!ね、違う!?」

「悪い。…俺が言うなって口止めしたから」

「聞いたでしょ?ママ助かる見込みも少ないんだって。あたし一人になっちゃう可能性高いの。あたし、まだ24だよ?なのにそんな事言われても分かんないよ…」


溢れていく涙が抱きしめられる翔の胸を濡らしてた。

こんな事言ってもどうしようもないのに。


と思う反面、こんな事翔に言ってゴメンね。って言う複雑な思いでいっぱいだった。

翔にはお母さん居ないの。

翔には16歳でお母さんは居なくて一人ぼっちなの。


なのに、責めてごめんねって思う複雑な気持ちでいっぱいだった。

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