永遠の愛

「…美咲？」


不意に聞こえた声にあたしは携帯から声のほうに視線を向ける。

作業着姿で今帰って来たであろう翔は不思議な顔であたしを見つめた。


「あ、おかえり」

「ただいま。…つか何してんだよ」

「あー…ママがさ通帳持って来いって言ってきて…」

「通帳？」

「そう」

「持って行って何すんの？」

「さぁ…分かんないけど持って来いって」

「ふーん…」


翔もいまいち把握できないみたいで、首を少し傾げる。


「まぁ、いいけど。ってかさ、今日からご飯頑張るから」


そう言ってニコっと笑ったあたしに、


「あんま無理すんなよ」


翔はあたしの頭をクシャっと撫でて微笑んだ。


「無理は翔の身体です」


オートロックを解除する翔に向かって微笑んでそう言う。


「つか最近の口癖はそれかよ」


呆れかえった翔はため息を吐き捨て、あたしが持っているスーパーの袋をさりげなく奪う。


「…ありがと」

「いえいえ。レディーファーストだからな」

「さすが営業トーク」

「だから今は違うっつーの！」


頭がグランと揺れるくらいに翔があたしの額を強く押した。

ハハッと笑うあたしに翔は呆れた表情で小さく笑う。


部屋に入ってすぐ翔は風呂に向かった。

その間にあたしは夕食の準備に取り掛かる。


多分、これがあたしが翔に出来る最大の優しさだった。

まだ内心、悲しくて悲しくて仕方ないけど、でもこれ以上…翔にも辛い所を見せたくはなかった。

だから自分なりに頑張った。



…自分なりに。