永遠の愛
「一時間くらい前に電話があった。お前が出ないからって、俺の携帯にあった」
「ごめん…授業してて」
「うん。だからここで待ってた」
「ごめんね」
「ううん」
さほどそれほど遠くない病院の道のりがあまりにも長く感じた。
信号で止まる度に、“早くして”って心の中で叫ぶ自分にイライラしてた。
病院に着くと、ママは既に別室でいてそのママの周りには医師、看護師さんが数人いた。
だけど酸素マスクをしたママを茫然と見るかのように医師達は何もせずに見てた。
だからプツンと何かが切れたんだと思う。
「ちょっと!何で何もしないんですか!?」
そう声を上げたのは見る先に見える心電図。
画面に映し出される心拍はもう、すでに…ない。
「ねぇ!先生お願いだから助けてよ!…ねぇってば!」
激しく揺する医師の腕。
「申し訳ありませんがこれ以上手のほどこしようがありま――…」
「待ってよ!何言ってんの?アンタ医師でしょ?だったらちゃんと最後まで見てよ!ねぇ、お願いだから――…」
「美咲!もう辞めろ」
そう翔が遮った声にあたしの目から涙が一滴、頬を伝った。
「何でよ。何で翔までそんな事言うのよ。あたしママが居ないと生きていけないの。…生きて、いけないのに…」
ドバッと溢れた瞬間に、ピィーっと機械の音が微かに鳴った。
もう、何も見たくない。
この今の現状を受け止めたくない。
「…20時(はちじ)12分――…」
その後の言葉なんて聞きたくなくて、あたしは力一杯に耳を塞いだ。
そんな崩れ落ちて泣き叫ぶあたしを翔はグッと抱え込んだ。
…享年49歳。
ママはこの世を立ち去った。