永遠の愛
「あの、すみません」
隅のほうで作業をしている30代くらいの女の人にあたしは声を掛けた。
「はい」
しゃがんでいる女の人は立ち上がり首を傾げる。
「あの…ここに岩崎さんって人は居てますか?」
「あー…岩崎さんなら昨年、辞めましたよ」
「え…辞められたんですか?」
「はい。岩崎さんのお母さんの体調が悪いらしくて田舎に帰られましたよ」
「そ、そうなんですか。有り難うございます」
軽くお辞儀をしたあたしは女の人に背を向けて足を進めた時、
「あ、あのっ!!」
少し響いたその声にあたしは思わず足を止め、振り返った。
「あの…もしかして新山さん?…ですか?」
あまりの驚きに目を見開いてしまった。
「そう…ですけど」
「あー…やっぱり。ちょっと待って下さい」
駆け足で姿を消した女の人にあたしは首を傾げて少し待った。
…何だろう。
って言うか、岩崎さん辞めちゃったんだ。
…逢いたかったな。
会って、話したかったな。
「すみません。…これ」
少し息を切らして来た女の人はあたしの前に白い封筒を差し出す。
「これは?」
「岩崎さんから預かってたんです。もしも、もしも私を探しに来られたら渡して下さいって」
「あたしに?」
「そうです。新山美咲さんって方に渡す様に昨年から言われてたんです。でもなかなかあなたに出会えなくて、だからお会いできて嬉しかったです」
微笑んだ女の人から封筒をそっと受け取る。
「有り難うございました」
お辞儀をしたあたしは再び足を進め、美術館を出る。
そして出た瞬間にあたしは封筒を開けて中のものを取り出した。