永遠の愛
「珈琲でもいいかな?」
「あ、すみません」
テーブルに置かれた温かい珈琲からは湯気がユラユラと出ていた。
「留学はどうだった?」
「凄くよかったです」
「そう。良かったね。美咲ちゃんが旅立ってからね、お母さんちょくちょく美術館に顔を出してたわよ。嬉しそうに留学してるのって話してくれてね」
「…そう…ですか」
「けどね、私の母が体調崩してしまって辞めたんだけどね…」
少し眉を下げる岩崎さんは小さく息を吐き捨てる。
「あの…もしかして…」
そう小さく呟いたあたしは仏壇に視線を送る。
「そうここに帰って来て丁度一年で亡くなったの。まぁ…もういい歳だったからね」
「そうなんですか。…もう美術館には戻らないんですか?」
「この家、誰も居ないからね。主人も早くに亡くなってね、子供も大きいからもう手を掛ける人も居ないからいいかなって…」
「……」
岩崎さんは悲しそうに部屋の中を見渡した。
「あー…で、美咲ちゃんはどうしたの?」
「あっ、…これなんですが」
横に置いていた鞄の中からあたしは一枚の写真を取り出した。
ママが落として行ったという写真。