永遠の愛
「あー…これ懐かしいわね」
岩崎さんは写真を手に取ってジッと見つめた。
「懐かしい?」
「そう、これ私が撮ったのよ」
「え?」
「んー…美咲ちゃんがまだ4歳?5歳の時だったかな。その頃の時のだけど、懐かしいわ。美恵さん、大切にしてたのね」
「……」
「もしかしてお父さんに会った?」
「…え?」
「美恵さんが離婚してた事ももちろん知ってたし、美咲ちゃんが旅立ってから父に会ったと聞かされてね…」
「……」
「あの場所が。あの美術館の絵の前が美恵さんの語る場所だったのかも知れないね。その前でね、いつも話されてたのを聞いてたの」
「……」
「美恵さんは元気?美咲ちゃんが帰って来るのを一番の楽しみにしてたから」
「……」
そう微笑んで言ってくる岩崎さんの視線からあたしは少しづつ顔を下げる。
そんなあたしの顔を覗き込むように岩崎さんは見つめた。
「どうかした?」
「…母は…」
「……」
「母は亡くなりました」
「…え?」
数秒置いた岩崎さんの声。
徐々に視線を上げると、岩崎さんは瞳を潤ませ、信じられない表情をした。
「それ、ホントなの?…冗談でしょ?」
「癌で亡くなりました」
「そんなっ、」
岩崎さんは声を震わせ、テーブルの上でギュッと手を重ねて握りしめる。
「あたしもまだ信じられないんです。でも現実を受け止めなきゃ生きていけない様な気がして…」
「ごめんね。ごめんなさいね。美恵さん、たまに来られてたのに気がつかなくて」
岩崎さんは今にも落ちそうな涙を堪えて頭を軽く下げた。