永遠の愛
「あっ、美咲ちゃん!」
家を出てすぐ背後からの岩崎さんの声に振り返る。
「はい…」
「これ、持って帰って」
あたしの手を掴んで紙袋を握らせる岩崎さんに視線を送る。
薄ら笑った岩崎さんから視線を紙袋に向け、手に取った紙袋の中を覗き込んだ。
「これって…ママの…」
中にはプリンと生うどん。
ママが“頂いたもの”って言ってたプリン。
おいしくておいしくてある意味ママの鉱物だった。
「それ美恵さん好きだったから」
「岩崎さんだったんですね。よく母が喜んで食べてました」
「ここの温泉街でね有名なの。名物もの」
「いいんですか?」
「いいよ」
「有り難うございます。…凄い綺麗な街ですね」
ここから見える街の風景。
山も綺麗だしゴチャゴチャとした都会の空気とは違う新鮮な風。
そして澄み切った景色。
「観光名所だからね。温泉街だからこれから沢山の人達が訪れるわ。ずっと先に行けばね、スキーも出来るの。夏はバーベキューなんか出来る広場もあるしね」
「へー…いい所ですね」
「美咲ちゃん。…またおいで」
「…はい」
「それまで元気でね」
「岩崎さんも…」
「えぇ…」
「それじゃあ、また…」
ニコっと笑った岩崎さんにお辞儀をして、あたしは翔が待っているといった場所まで足を進めた。