永遠の愛

大人になった礼儀ってもんがあると思う。

無視しててもこのままじゃダメって思う。


10代ならともかく、20代半ばになった今では分かる。


だけど何故か帰りの足は家に向かってた。

今はまだ帰れそうにない。

もし駅であの女に出くわしたら嫌だから。


だから、


“その内帰るから”


適当な返事を一応、翔に送った。

もちろん送った後に携帯が鳴った。


躊躇って躊躇ってしたけど、思う様に手が動かなくて出れなかった。



そんな日々が続いて1週間。

このままじゃダメって思い、気持ちを切り替えようとソワソワする気持ちのまま仕事が終わった後、マンションへと足を踏み入れた。


ガチャっとドアを開けてすぐ先に見えたのは電気の明かりが一面に広がったリビング。

そのリビングのドアを開けた瞬間、椅子に座ってた翔はあたしに視線を向けた後、つけていたテレビを消した。


テーブルには何本飲んだかも分からない数のビールの空き缶。

灰皿には今にも埋もれそうになっている吸い殻。



…見た感じで苛々してるってのは分かった。



でも、それはあたしも同じでしょ?

< 285 / 625 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop