永遠の愛
「正直…なんつーのかな、」
波の音を聞いてると、不意に聞こえた翔の声に視線を向ける。
翔は真っ直ぐ海を見つめてて、瞳を動かそうとはしない。
「…うん?」
「ここでさ、美咲に行って来いって言ってさ…」
「うん」
「5年って、あっという間とか言ってたけど、正直長かった。こんなに長いとは思わなかった」
思い出した事があった。
あたしが旅立って3年目の4月の春。
丁度、翔が27歳の誕生日だった。
“おめでとう”って言うあたしに、“会いたい”って、“今から行こうかな”って、そう寂しそうに言った。
でも翔は寂しさを掻き消す様に、“冗談”って笑ってた。
電話越しから聞こえてくる笑い声は悲しそうで寂しそうだった。
だから、あたしはその時、何も言えずにいた。
“あたしも会いたい”って言ってしまうと、翔に負担をかけてしまうと思ったから。
でも、翔は“会いたい”って、その言葉をそれ以降は言ってこなかった。
だから、たった一回の“会いたい”って言われた言葉が、時たま頭から離れずにずっといた。
「…ありがとう。待っててくれて」
そう言ったあたしに翔は笑みを漏らし口角を上げた。