永遠の愛
「ママ…」
不意に聞こえた小さな声。
視線を落とすと、ションボリした香恋ちゃんの姿。
「どうしたの?」
「…たーた」
そう言って大きく両手を上げる。
「えー…もうすぐでしょ?歩いて、お願い」
しゃがみ込んだ葵は香恋ちゃんの頭をクシャリと撫でる。
「葵。抱っこしてあげなよ」
「だって重いんだもん」
そう言って頬を膨らませる葵はため息をつきながら立ち上がる。
「重いって…。香恋ちゃん、歩いてばっか疲れてんじゃない?」
「でも、すぐそこだし」
葵は数メートル先のマンションを指差す。
だけど、香恋ちゃんは一向に足を進めようとはしない。その挙句、葵も香恋ちゃんに手を伸ばそうとしない。
そんな葵に思わずため息が出た。
「おいで香恋ちゃん。おねぇちゃんが抱っこしてあげる」
しゃがみ込んでそう言ったあたしに、さっきとは打って変わって香恋ちゃんは笑顔を見せた。
「きゃはっ、」
フワッと抱えて瞬間、香恋ちゃんが声を出す。
可愛い。
物凄く可愛い。
あたしの首にギューって掴まってくる香恋ちゃんが本当に可愛かった。