嘘つきヴァンパイア様



「嬉しい。行きたい!歩き回るのも楽しかったけれど、ほとんど見たから、どうしようかと思ってたの。特にやることもないから…」



人間界にいたころならば、勉強、座学、実習で暇などなかった。けれども、冥界に来てしまっては、それは出来ない。

いや、出来ないこともないが、食事を楽しむ習慣がないこの世界で、そのような勉強はあまり意味がない。



それに、呉羽の婚約者で冥界の王女と言われても、何かしろとは言われなかった。


それどころか、呉羽が何をしているかもいまいち、彼女はわからないのだ。来た当初、サラリと言われたが、それも実感は沸かない。


呉羽は「仕事」とか「任務」とか、口にしているが、何の仕事なのだろうとか、任務とは?と、最近の疑問でもある。


「では、参りましょう。ご紹介しなければならない神もございますゆえ」


「それって、レシィの……例の彼?」


以前、朝食の時間にレシィの恋人らしき神様について話をきいた。


その彼かと思い、興味深く聴くと、彼女は間をあけることなく「違います言と、否定的な答えを言うのであった。



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