嘘つきヴァンパイア様



だが、扉をぬけ、初めて冥界の外に出た瞬間、涼子はその美しい光景に数段の階段をかけおり夜空に浮かぶ月を見上げた。


「わぁっ…レシィ!すごい!」


冥界の外の空気は、少し冷たい。太陽が存在していないことが関係するのか、肌寒さを感じる。


けれども、そんな寒さ、涼子はさほど感じなかった。それよりも、今まで窓越しに眺めるだけだったものを初めて生でみた。その美しさは格別に彼女の目には見える。


白の薔薇は枯れている部分など全くない。


並ぶ街灯の光り、月明かりを反射し輝く噴水。少しの風でユラユラと揺れるブランコ。



まるで、幼い子供のように彼女ははしゃぎ、背後で見つめる無表情なレシィに手招きをした。



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