嘘つきヴァンパイア様
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書物庫を出て、涼子は真っ直ぐに部屋に戻る。
外を眺めれば黄色い月。最近、太陽がないこの光景もなれた。
来たばかりはつい、「まだ夜か」とつぶやいていた彼女も、今では「お昼か」と思えるようになった。
太陽がないと言うのは、どうも不自然な気がしてならない。
だが、住めば都とはまさにこのことだと、彼女はしみじみ感じる。
レシィが言っていた。「黄色い月は太陽と同じパワーがある」と。涼子が体調を崩さないのも、そのおかげだ。
そのような事を考えながら渡り廊下を歩いていると、曲がり角から、影が近づいてくる。
(あ……誰か、来る)
反射的に立ち止まると、その影が姿を現し、涼子を見て頭を下げる。
「おっと…涼子様ですか」
「あ…ど、どうも」
長い刀を背中に背負う神様。家来たちだ。
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