嘘つきヴァンパイア様
「そっか。あ、だけど…本当に良かったよ」
「え?」
「やっと、見つけた」
「え?あ、ごめんなさい。よく、聞こえないです」
「いい。それで、じゃあ、俺は行くわ」
「あ…は、はい」
軽く手を上げると男はポケットに手をいれ、そのままは人混みに姿を消した。
「…なんだったんだろう」
去っていく背中を眺めていると、何故か不思議な気持ちになった。切ないような、どこか暖かく、懐かしいと言うべきか…それを言葉にするのには難しい感情だ。
「…帰ろう」
なぜ、このような事を感じてしまうのかわからない。けれど、何か嫌な予感を涼子は感じてしまう。
男が消えて行った方向に背を向けて歩く。数歩歩いたところで振り返るがやはり男の姿はない。
何か気になるもの、涼子はそれを振り払いまた急ぎ足で駅のホームに戻ったのだった。
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