嘘つきヴァンパイア様
以前のように、なにか見えるわけではない。
けれど、なぜかここにいたかったのだ。
「…カトレア、様の……生まれ変わり、か」
呆然と眺めること、数時間。ふと、誰かの足音が響いた。
広い中央ホールには、その高いヒールの音がよく響く。
普段は音などたてずに歩くくせに。床の素材が違うのだから、仕方がない。
その音に惹かれるように、涼子が顔だけ向けると、そのには無表情のレシィがいた。
まるで、人形のようなドレスのスカートをヒラヒラとさせ彼女に近づけば、レシィもまた涼子と同じようにケイトの絵画を見上げる。
「涼子様、またこちらにいらしたのでしか?家来達が涼子様がいなくなったと探しておりました。ここに来るのは構いませんが、一言レシィに言ってくださいまし」
「え?あ、ごめん…」
実はここに来る前、涼子は家来のアルフレート達といた。冥界の地理に詳しい彼らに、屋敷の周りのことを聞いていたのだ。
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