嘘つきヴァンパイア様
『カトレア様だと?馬鹿を言うな。カトレア様は呉羽様の始祖であるケイト様の妻…彼女は転生を拒んだ。あと、数千年は生まれ変わるはずがない』
『分かっています。ですが、その証拠にカトレア様の棺が姿を消しました。そして傍には、蓮華の花がありました』
『蓮華の花?まさか、シャカ様が?』
『はい。何が理由かは分かりません。ですが、まずは理由より早くその人間を我らのもとに。ギルド様はカトレア様の生まれ変わりを花嫁にし、力を得てこの冥界を自分の物にするつもりです』
ルカは立ち上がり、グッと唇を噛み締める。
『あの悪夢を再び起こさないためにも。呉羽様、彼女を探し花嫁にするんだ。この冥界を滅ぼさないためにも。どうか、我が君よ』
『………』
ルカの熱のこもった言葉に呉羽は僅かに眉をひそめ、暗く不気味に光るオレンジの月を眺める。
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