嘘つきヴァンパイア様
だけれど、思いだせない部分はどうしてもある。
そのような時は言葉を濁してごまかす。記憶がないとは彼らには到底いえなかったから。
「いや、でもしかし、呉羽様もやっと身を固めてくれたから、俺たちは本当に嬉しい」
長い尋問が終わったころ、1人の若い男の神様がしみじみと仰いだ。
彼に同意するかのように大きく頷く神様達。
「そう、ですか?そう言ってもらえるのは嬉しいです」
(ここの神様達はみんな私を受け入れてくれる。それは幸せなことだって思う)
「あたりまえじゃないですか。呉羽様は普段あの屋敷にいてうるさい従者と体力馬鹿の家来達に囲まれて、全く女の影がなかったんですから」
「そうそう。少し前は暇さえあれば、城下にサボりに来てたな」
思いだすように男はうえをみる。
それは涼子が来る少し前のこと。
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