嘘つきヴァンパイア様

誘拐


***


また夢をみた。その夢はいつもとは少し違った。

涼子の目の前で、男女が熱い抱擁を交わしている夢。

女は男の胸に顔をうめ、男は受け入れながら華奢な身体をだき、頭を愛しそうになでている。

幸せそうな光景を眺めていれば、僅かに声は聞こえてきた。


『ねぇ、もし……私とあなたがこの世から消え去って、また新しい命を手にいれたら、再び会えるかしら』



『会えるさ。きっと。どこにいても、お前を探すから。絶対に』


『本当に?絶対よ?わたしね……この肉体が滅びて生れ変っても、あなたとまた一緒になりたいの。その肉体がまた滅びても、ずっと、ぞっと、あなたと結ばれたいわ』


『あぁ、たとえ銀河の果てにいようとも、君を見つけよう』


それは、愛し合う恋人たちの会話のようだ。いつもと違うこの夢はなんなのだろうか。

不思議と涼子の胸はざわついていた。


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