嘘つきヴァンパイア様
まるで、おとぎ話に出てくるような大きな満月。月のクレーターが肉眼でも見えるほど大きい。
その月を瞳に写した呉羽は、そっと月に向かって手を伸ばす。
『そうか…どうやら時は来た。花嫁を迎える気はなかったけど、仕方がないな…避けたかった運命だけど、やはり定められた残酷な運命からは逃れ慣れないみたいだ』
『……呉羽様』
『ユノ』
『はい』
『花嫁を迎えに言ってくる。しばらく、留守にするから、色々と頼んだ』
ユノを見つめ、凛とした表情の呉羽にユノは小さく頭をさげる。
『お任せを。呉羽様』
この瞬間から、何かが動き始めた。消して抜け出せない、偽りの記憶が…暗く光のない冥界の運命を変えるなど…
神である彼ら、誰もが想像もしなかった。
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