嘘つきヴァンパイア様
数秒の沈黙が流れ、振り返る呉羽はとても冷たい目で涼子をみる。
「……なに」
「飢え死になんてしないよ。私のことを、利用したいならすればいい。だけど、聞きたいことがあるの」
思い鎖を引きずり、涼子は柵に手をかける。
(呉羽に、もう一回聞きたい……)
「本当に、この数ヶ月の時間は、偽りだったの?」
「そういっているだろ。全部、偽りさ。そんなこと再度確認して何になる」
「うん……だけど、私は呉羽と過ごした時間のすべてが嘘だったなんて、思えないの」
(嘘もあったかもしれない。けど、事実もあったって……なんとなく思うから)
涼子の言葉を聞くと呉羽も同じように柵に手をおき涼子に近づいた。
「思いたければ、思えばいい。そう言えば、はっきりと口にしてなかったな」
「……え?」
「俺は、お前を愛してなんか……ない。全くもって逆だ。俺はお前が……大嫌いだ」
そう言うと、呉羽は唇をかみ締めたあと、涼子から離れた。そして、振り返ることなく地下牢
を去る呉羽の背中を涼子は見つめていた。
頬から伝う涙は、止まることを知らない。涙って、こんなにも出るものだと、初めて分かった。
「そ……っか」
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