嘘つきヴァンパイア様
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呉羽がいなくなってから、どのくらいの時間が経過しただろうか。
枯れるほど涙を流し、目は腫れ、ほのかに痛かった。
泣いては、泣きやみ、思い出しては、また涙を零す。
その間に、月は色を変えた。呉羽のことを考えてはきりがない。けれど、頭の中は呉羽のことばかり。
今、何をしているだろうか。眠っただろうか。仕事をサボって皆を困らせてはいないだろうか。
「……呉羽」
そのような呼びかけ、聞こえるわけがない。けれども、呼ばずにはいられない。その名前を呼ばなくては、ここから消えてしまいそうで涼子は怖かったのだ。
専門に行くため、1人暮らしを始めたばかりの頃、孤独で寂しかった。まるで、その時のようで寂しい。
「呉羽」その名前をもう一度口にすると、不意に暗闇から誰かの足音が響く。聞いたことのある音。特徴的なヒールの音。これはレシィだ。
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