嘘つきヴァンパイア様
「そうだよね。おかしいって最初から思ったんだ…。病院で目覚めた時、恋人だったって言われても実感なんてなかった」
「……」
「記憶障害って言われて…そうだと思いこんだよ。だって、呉羽はとても優しかったから…だから、この人のために思いだそうって…思った」
「…はい。それは…私がよく知っています…」
「ありがとう。でもね…もしかしたら…って、不安はあったの。だった、触れても、触れられても全く懐かしいとか感じなかったから。初めて触られている気がして仕方がなかったんだ」
「……」
「そうしているうちに、カトレア様の記憶をみるようになって、それが自分の物だと思い込んでいた。呉羽も同じことを覚えていてくれいたからさ…」
「…はい」
「呉羽に申し訳なくて…思いだせないのが…もどかしくて…必死だったよ…」
視界がゆがんだ。今にもこぼれ落ちそうな涙を隠すかのように顔を伏せる。
「この人について行こうって思ってた。記憶がはっきりしなくても…また、思いでを作ればいいって…思っていたのに…」
「……涼子さま?」
言葉につまった涼子を振り返ると、彼女もまた、顔をあげレシィをみる。
「わたしって…本当に…馬鹿だね」
涙がまたこぼれた。脚をかかえ、蹲るように顔を埋める。
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