嘘つきヴァンパイア様




「ねぇ、レシィ?呉羽にさ…嘘だって、言われてから……呉羽ってば、私の名前呼んでくれないんだよ?いくら嘘だったとしても、呉羽とは長い時間、一緒にいた。恋人らしいこともしたのに……男って、みんなそうなのかな?」

「それは……」

「心と身体は、別ってこと?どうして、そう……割り切れるのかな。私には……出来ないよ。呉羽が好きだから、触られて嫌じゃなかった。もっと、触れて欲しいって……おも……た」


赤い瞼を強くこすった。黙って、話を聞くレシィに涼子は止まらなかった。


呉羽にぶつけられなかった感情をぶつけるように、涼子が振り返りレシィを見た。



「けど、呉羽は言ったの……。私のこと、愛してなんかないって。すべてはカトレア様の生れ変りである私を利用するためだって。私のこと、殺すって……」


「涼子様……落ち着いてくださいまし……」

涼子の耳にはもう、レシィの声は聞こえない。



呉羽から言われた言葉の数々が走馬灯のようによみがえり、唇をかみ締め、涙が頬から首に伝った。


「呉羽……わたしのこと、嫌いだって……大嫌いって…聞きたくなかった。聞かなければよかった。呉羽の忠告を聞いていればよかった。いま、こうなって、分かった。今まで見てきた嫌な映像は呉羽のことだったんだって。分かって、分かっていたら……わたしは、呉羽のことなんか……」



好きにはならなかった。その言葉を口にしたいはずなのに、涼子は言えなかった。

分かっていても、自分はきっと呉羽を好きなっていたと思うからだ。



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