嘘つきヴァンパイア様


「辛いよ。レシィ……いっそのこと、呉羽の手にかかっていれば……こんなにも辛くなかったのに!レシィの手で、どうにかしてよ……私は、もう苦しくて…辛い。辛いはずなのに……呉羽を恨めない。嫌いに、なれなの。どうやって、呉羽を理解しようって……そんなことばかり浮かんで、呉羽のことばかり考えちゃうの」



もう、すでに腫れあがった顔がどうなろうと、良かった。呉羽の前で流すことの出来なかった涙。


涼子はあの時、呉羽に言ったのだ。「泣き叫ばない、理由を知っていると」



その理由は怒りより呉羽がぶつけた嘘と思いをどう「理解しよう」と思ったからだった。


怒りなど浮かばない、いや、浮かんだとしても、消え去っていくくらい愛していた。


だから、許したかったのだ。だから、泣きさけばなかった。そんな、馬鹿みたいな理由で。


ぶつけられなかった思いをぶつける涼子をレシィはただ、黙って見ているしか出来なかった。



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