嘘つきヴァンパイア様



「何を言って…まさか、俺のこと覚えてないのか?」


「お、覚えますよ。昨日、初めて会いました。それに横断歩道でも」


「…え?」


「え?」


涼子の言葉に男は少し切なそうに瞳を細め涼子を見つめた。肩に置いていた手を離し、ベッドに腰を下ろし涼子から一度視察を逸らす。



「もしかして、記憶がない?」

「え?」


「俺の名前は?」

「し、知りません。昨日、あったばかり…ですよね?」


「……」


「あ、あの」


「あぁ、そっか…」


ため息を吐き、男は"切ないな"と、呟くと涼子から離れ外に視線を向けたあと、すぐに視線を戻した。


「こんな事を言われて驚くかもしれないけれど…俺は、涼子の恋人。半年後に、結婚の約束をした婚約者だよ」



「こん、やくしゃ?…え、ええっ?!」



恋人、婚約者。その言葉に涼子の叫び声が部屋中に響き渡ったのだった。



< 43 / 475 >

この作品をシェア

pagetop