嘘つきヴァンパイア様
「何を言って…まさか、俺のこと覚えてないのか?」
「お、覚えますよ。昨日、初めて会いました。それに横断歩道でも」
「…え?」
「え?」
涼子の言葉に男は少し切なそうに瞳を細め涼子を見つめた。肩に置いていた手を離し、ベッドに腰を下ろし涼子から一度視察を逸らす。
「もしかして、記憶がない?」
「え?」
「俺の名前は?」
「し、知りません。昨日、あったばかり…ですよね?」
「……」
「あ、あの」
「あぁ、そっか…」
ため息を吐き、男は"切ないな"と、呟くと涼子から離れ外に視線を向けたあと、すぐに視線を戻した。
「こんな事を言われて驚くかもしれないけれど…俺は、涼子の恋人。半年後に、結婚の約束をした婚約者だよ」
「こん、やくしゃ?…え、ええっ?!」
恋人、婚約者。その言葉に涼子の叫び声が部屋中に響き渡ったのだった。
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