嘘つきヴァンパイア様

記憶障害






***


「うん、軽い記憶障害ですね」


目の前の医師はサラリとそんな言葉を口にした。


あのあと自らを呉羽(くれは)と名乗り恋人だと言う男に連れられ記憶がないことを医師に伝えた。


1時間ほどに及ぶ検査結果は軽い記憶障害。


「まぁ、事故直後にはよくあることだから、あまり深く考えず生活したほうがいいでしょう」



「は、はぁ…」


記憶障害だと言われても涼子はいまいち、実感がわかなかった。


少しも呉羽の事を覚えてないし、婚約したのなら何かしら記憶があるはずなのに何も浮かばないからだ。


それが、記憶障害だと言われてしまえば終わりだが、涼子はどうしても納得が出来なく曖昧に医師の言葉に頷く。


< 44 / 475 >

この作品をシェア

pagetop