嘘つきヴァンパイア様
最終章
真実と誓い
***
とても、とても長い夢をみた気がした。
いや、とても、とても、長く幼い夢に触れたのかもしれない。
暖かい微睡みから解放され、生まれたての子が初めて目を開けるかのように、涼子はゆっくりと瞼をあける。
『………ん』
暗闇と月明かりで、ショボショボと痺れる瞼を擦る。
暖かい温もりと、ふわふわと感じる感触が気持ち良くそのまま身を任せるように顔を埋めると、頭上から穏やかな微笑みが聞こえる。
『おい。二度寝するつもりか?』
『………ん…?』
(にど…ね?)
聞こえた声に、閉じた瞼を開き、先ほどより強い力で目を擦り見上げればそこには呉羽の姿。
不機嫌な顔で見下ろし、寝ぼけ顔の涼子の頬を軽く叩くと、彼女の意識がはっきりとしていく。
(………あ)
『お、お……は…ょ』
(そうだ。わたし、呉羽に抱き締められたまま、眠ったんだった)
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