嘘つきヴァンパイア様
むかし、むかし、風邪を引いたとき初めて粉薬を飲んだ時、とても苦かった。
その味によく似ている。
「ほら…そんなに苦いなら、これを食べろ」
「んー…っ」
再び甘い果実を指で押し込まれるが、顔を反らすと呉羽は薬と同じように口にくわえ涼子の顎を掴み口の中に押し込む。
(あっ…)
甘い味が苦味を緩和していく。
(甘い…だ、けど…これって……キス…されてる…みたい。さっきの薬の時も…呉羽からしたら…なんでもないんだろうけど…冷静に考えると、すごく…気持ち良い)
「はぁっ…くれ…は」
果実を飲み飲み、離れた唇を押さえ、そのまま俯く。
赤く染め上げる顔を隠すと、頭上から「ははっ」と笑う声が聞こえ、見上げるとそこには、嘘だと。告白される前と同じ顔で涼子を見ていた。
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