嘘つきヴァンパイア様


「お前、顔真っ赤だ」


「なっ…だ、だって…」


(こんなキス、久しぶりだから。いつも、私を抱くだけで、キスなんかしてくれなかったんだもん…)



「また、熱があがるな」

「誰のせい…よ」

「…さぁ、誰だろう…」


(もう…ばか。こんな風に優しくされると、ついこないだまでの事が嘘に感じちゃう)


もし、本当に悪い夢だったら、どんなにいいことか。


そんな事を、考えられずにはいられない。だって、呉羽はとても優しい。


目的の為かもしれないが、この優しさが涼子は嬉しくて仕方がない。


「ねぇ…呉羽?」


だから、つい、言ってはいけない事を口走ってしまう。


「好き….だよ…呉羽のこと」

「………え?」

「呉羽がそばにいてくれるだけで…とても、落ち着く。私は、呉羽が好き…そばにいたいの……ダメ…かなぁ?」


声は僅かに震えていた。

その震える声を抑え、呉羽を見上げながら言うと、微笑んでいた顔は一瞬で冷めた表情に変わった。

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