嘘つきヴァンパイア様


その顔が全てが語っていた。



それは、涼子に対する拒否の表れ。


「あまり…調子に乗るなよ」

「………あっ」


抱き締めていた手を離し、涼子から離れ立ち上がる。途端に襲ってくる冷たさに涼子は呉羽を見上げた。


冷たい目。牢獄で、涼子を見下ろす視線とそれは同じ。


(やはり…そう、なる…んだね)


「俺は戻る。言っておくが、体調が完全に治ったらまたあの牢獄に拘束する。今のうちに、好きなことをしておけ。間違っても、逃げようとか思うなよ」


「呉羽…」


そのまま、涼子に背をむけ出口に向かって歩きだす。


離れていく、温もり。遠ざかる呉羽の背中。

(いやだ…わ、たし…)


「待って…呉羽」


「…!」

よろける身体で起き上がり、その背中に縋り付くと、びくりと呉羽の身体が反応する。


腕を精一杯に腰に回し、ぴったりと身体を寄せた。

感じる暖かさ。

(やっぱり…わたしには、これがないと、ダメなんだ…だから…わたしは…)


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