嘘つきヴァンパイア様



「呉羽?」


涼子の問いかけに呉羽は黙りこむ。何処か遠くを眺める彼をみると呉羽は公園を指差す。


「どうやら、迎えが来たみたいだ。待ってろって言ったんだけどな。せっかちだなぁ…あの
男は」


「あ…あの」


「涼子」

「は、はい?」


突然、手を離しその手をそのまま彼女の肩に乗せる。

かなり様子のおかしい呉羽に涼子はビクビクしながら公園と呉羽を交互にみて、恐る恐る口を開く。


「あの…な、にか」


何を言われるのか。嫌な予感に無意識に一歩下がる。だが、それをさせまいと呉羽に突然引き寄せられ抱き締められた。


強引に抱かれ背中に回される腕。フワリと香る甘い香りに涼子の意識が遠退いてくる。


(どうしたんだろう…いきなり…てか、なんか…おかしな、気分…な…に)


頭の奥がぼんやりとする。襲って来る眠気。そして、何故か身体の力が抜けて来る。


「く…れは」


名前を呼んだのが最後。涼子は眠りに落ちた。


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