嘘つきヴァンパイア様
広い部屋にひとりきり。そして、思い出せない記憶に少し不安になった。
とりあえず、此処は何処だろうか。そう思い、ベッドから立ち上がる。
少しふらつく足取りでカーテンに近づき手を掛けると、外は真っ暗だった。曇っているのだろうか、雲の隙間からは明るい光が見える。
「月だ。って、ことは夜か。そんなに時間たってなかったんだ」
眠っていたから。何時間も経過したものだと思っていたのか、彼女はホッと胸を撫で下ろす。
そして、本当にここはどこだろうか。
ところで、呉羽はどこに行ったんだろう。再びベッドに戻り腰を下ろす。天井から吊るされた天蓋を眺めようと上を仰いだ時、突如として部屋のドアが開いたかと思うと一人の女性がそこにいた。
「あ…」
起きていると思わなかったのだろうか。涼子の姿を見て、一瞬だけ動きを止めた。
ブロンド色の美しい髪の毛に蒼い瞳。色白の肌に黒いショート丈のドレスがとても似合っている。
思わず見惚れる涼子に彼女は無表情のまま彼女に近づき頭を下げる。
「おはようございます。涼子様」
「え…あ、おはようご…って、え!?」
名前を呼ばれた。
なぜ、知っているのか。それに何故ゆえ様など付けるのか。意味の分からない彼女の行動に驚くと彼女は平然と口を開く。
.