政略結婚 ~全ては彼の策略~
18時少し前に駅前のロータリーに着くと、まだ悟は居ないようだった。
ドキドキしながら立っていると、少しして目の前に白いセダンが道に寄せられて停まった。
見ると運転席には悟が座っており、ドアの窓がスーっと下がると"乗ってください"と声をかけられる。
どうやら駅前の駐車場に停めて待ってくれていたようだ。
優香は少し迷いながらも助手席のドアを開けて座った。
2人きりで話すのは初めてだ。
しかもいきなりこんな密室で。
隣に悟がいる。
初めて見る私服姿に緊張が増していく。
悟は薄手の紺のニットにジーンズを合わせていた。
シンプルな服装だからこそ、悟のスタイルの良さが際立っている。
悟の隣に居ても幼くないか気になり、優香は自分の服装をもう一度確認した。
何度もクローゼットの中を確認し、迷った挙句、結局最近買ったばかりのお気に入りの白いタートルネックのニットワンピースにベージュのトレンチコートを合わせている。
靴も身長の高い悟に合うように、自分の持っている中ではヒールの高いパンプスを履いてきていた。
緊張でまともに会話ができる自信がなくなってきた優香は、「わざわざ迎えに来て頂いてありがとうございます。」とお礼を言うので精一杯だ。
「こちらこそ急に呼び出してしまってすみません。できるだけ早いうちにお話しておいた方が良いと思いましたので。和食が良いとの事だったので、先日行って美味しかったお店を予約してます。」
悟から夕食は何が良いかと聞かれたので、和食とだけ答えていたが、予約までとってくれていたとは思わず優香はお礼を告げた。
「悟さんは和食お好きなんですか?」
特に取り留めのない会話。
それでも優香にとっては大事な会話だった。
悟のことを少しづつ知る事が出来る。
優香は幸せを噛みしめていた。