政略結婚 ~全ては彼の策略~
食事はとても美味しかった。
旬の食材がふんだんに使われており、上品な出汁が口の中に広がる。
食事が進むとようやく優香も緊張が溶けてきていた。
悟は寡黙である印象が強いが、流石に気を使ってくれたのか優香との会話の話を広げようとしてくれているようだった。
お互いの仕事の事など日々の出来事を話し和やかな空気だったが、デザートが到着して店員が「ごゆっくり」と去っていった後、悟の雰囲気がピリッとした事を察した。
優香も自然に背中をピシッと伸ばす。
そして悟は口を開いた。
「優香さん、今日は大切なお話をしたくて誘いました。2人で会うのは今日が初めてですが、今までの想像通り優香さんはとても素敵な女性だと思っています。」
まさか悟から"素敵な女性"と言って貰えるなんて…と優香は感動していた。
例えそれが優香と結婚する為に用意された偽物の言葉だとしてもだ。
喜びで惚けていると、トドメを刺された。
「一生大切にすると誓います。私と結婚前提にお付き合いして頂けますか?」
そんな事、返事なんて何年も前から決まっている。
父親から勧められた結婚であるのに、こんなに嬉しい言葉まで貰えるなんて。
彼の気が変わりませんように。
私と結婚した事を後悔させないように、私に出来ることはなんでもしますから…
優香はそう祈りながら「宜しくお願いします。」と瞳に嬉し涙を浮かべながら微笑んだ。