政略結婚 ~全ては彼の策略~
食事が終わり、悟は優香を車でマンションまで送り届けてくれた。
もう少し2人でいたい。
優香はそう思うが、なかなか言い出せずにいた。
2人で会うのは今日が初めてなのに、部屋に誘うのはやめておいた方が良いのだろうか?
でも2人が結婚するのはもう決定事項のようなものであり、悟もそのつもりのようだし、多分結婚した後はこのマンションに住むことになるだろう。
優香は勇気を振り絞って、悟に提案した。
「あの、もしよろしければ家に寄っていきませんか?父には結婚したら相手の方とこのマンションに住めば良いと言われていたので、1度見ていきませんか?」
優香の言葉に悟は少しの間考えるように黙ってしまった。
やっぱり部屋に誘うなんてやめればよかった…
優香は自分がかなり浮かれていたのだと反省し、少し俯きながらもじわりと涙が浮かんでくる。
悟が結婚を承諾してくれて、初めてのデートができ、告白のような段取りもきちんとしてくれたため、もしかしたら悟も優香の事を少しは女性として見てくれていたのではないかと思って淡い期待を抱いてしまったのがいけなかった。
そんな事あるわけなかったのに。
11歳も年下で、大した取り柄もない私が彼に見合うはずなんてなかった。
彼にはもっと大人で、上品で、知的で、隣にいても違和感なくいられる女性が合うことなんてずっと前から分かっていたことなのに。
優香は期待した自分を恥じていた。
悟が望む優香の取り柄として1つあるとすれば、優香と結婚した後、社長になる可能性がほぼ100パーセント決まることくらいだろうか。
彼なら優香と結婚しなくても社長の座を手に入れることも可能な気はするが、きっと確実に社長になる為の手段だったのだろう。
父親から優香との結婚を提案したということは、自分が引退する時期になったら社長を任せる事も話しているのだろう。
もしかしたら父親が、社長になる為には優香と結婚して義理の息子になる事を条件としていると言ったのかもしれない。