政略結婚 ~全ては彼の策略~
少しの沈黙の後、悟は「今日はこのまま帰ります。」と言った。
分かっていた返事に優香は落ち込んだが、これから悟に好きになってもらえればいい。と思えた。
「分かりました。それではまた。今日はありがとうございました。」
悟をこれ以上引き止める勇気はなかったのであっさり諦めることにした優香はお礼を伝えて車を降りるためにシートベルトに手をかける。
するとスっと悟の手が伸びてきて、シートベルトを外してくれた。
悟との距離に慣れてきていたと思っていたが、全く慣れてなんていなかったと優香は感じた。
優香の息が届く距離に悟がいる。
驚いて動けないでいると伺うように数秒見つめられた後、"ちゅ"とリップ音が静かな車内に響いた。
………!
一瞬の出来事なのに、時が止まったかと思った。
「優香、目を閉じて。」
優香は心臓の音がうるさくて、どうにかなりそうだった。
悟が自分の名前を呼び捨てにした事に驚かない程に、動揺している。
ぎゅっと目を閉じると再び唇が重なった。