政略結婚 ~全ては彼の策略~
この会社は中小企業であり、大企業には及ばないが福利厚生もしっかりしている。
他の中小企業と比較すると業績も安定しており、かなり勤めやすい企業と言える会社だった。
社員は200名程であり、悟は社長を含め数名しかいない国立最難関大学出身者である。
優遇されている事に対して羨む事はあっても文句を言う者はいなかった。
悟は幼い頃からの環境で自分より遥かに優れた人物ばかりを見てきたため、自分がそこまで優秀だと思った事はないが、その様な環境下でも昔からなんでもそこそこ上手くやれる方だとは自覚していた。
三兄弟の末っ子である悟は、2人の兄の失敗や成功を見て育ったお陰か容量の良さがあり、目上の人とのやり取りにも慣れているためか、昔から愛嬌がない割には年上から気に入られやすかった事も取り柄として持ち合わせている。
今日の話とは何だろうか。
きっと取り留めもない、社長の話し相手として誘われているだけだろうと思いながら悟はその日の仕事をこなしていく。
もうそろそろ"あの話"が来てもおかしくない頃だろう。少し探りを入れてみようか。
悟がニヤリと黒い笑みを浮かべるのを誰も気づくことはなかった。