政略結婚 ~全ては彼の策略~


仕事が終わると社長と共によく行く焼肉店へ向かう。

社長はとにかく肉が好きなようで、この店は子供の頃から通いつめているらしい。
10年程前に改装したと聞いた店内は程よく落ち着きがあり既にたくさんの客で賑わっている。

店へ入るといつものように店主の妻が2階の席へと案内してくれた。


毎回お決まりのメニューをオーダーし、飲み物といくつかの摘みが運ばれてきたくらいに社長が悟に「秘書の仕事は慣れてきたか?」と問いかけてきた。

「まだ勉強不足で苦労する事ばかりですが、社長と共に仕事が出来て毎日充実しています。」

悟の答えに頷いた社長は「神崎から"苦労している"なんて言葉が聞けるとはな。」と笑う。


「社長職の仕事を見てどう思った?神崎の実家とは内容も全く違うだろう。興味は出てきたか?」

「私は三男で、実家の会社とはあまり関わることはなく今まできましたから。実際のところ、社長と共に働くようになってから初めて知ることばかりです。」

「男3人だとそういうものなのか?あいつ(父親)からこんな中小企業じゃなくて自分の会社に来なのかと言われるだろう。」

「それこそ有り得ませんよ。私は社長を尊敬していますし、この会社に務めることが出来て本当に良かったと思っています。父親も、松橋社長のところなら心配ないと言っていますし。」



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