政略結婚 ~全ては彼の策略~
会社からそのまま実家へ向かうと、母親が作った夕食が並んでいた。
久しぶりの娘との食事に張り切ってくれたのか、優香の好物ばかりが並んでいる。
それを見て、父親の大事な話が少なくとも悪い話ではないことだけ察して優香の緊張が解れた。
父親はまだ帰ってきておらず、もう少しかかりそうだと連絡があったと母親が教えてくれた。
「お父さんの大事な話って何か聞いてる?」
優香の質問に、にんまりと笑った母親は「お父さんから聞くまでのお楽しみね。」としか言ってくれなかった。
父親の帰りを実家で飼っている犬のカエデと戯れながら少しソワソワしながら待つ。
優香は、"…もしかして"という気持ちがあった。
それは優香の結婚についてである。
就職してから何かと父親からのプレッシャーは感じている。
その1つが今優香が住んでいるあのマンションである。
優香は幼い頃から決められた婚約者という存在はいないが、何となく自分の好きになった人とは結婚出来ないのだろうなということは分かっていた。
共学の学校に通ってはいたが、優香が男子生徒と付き合う事に関してもあまりよく思っていないようで、高校の時に唯一告白してくれた人と付き合ったが、親に隠れて付き合う事に優香も罪悪感からあまり長くは続かなかった。
——もし、父親から結婚相手を提示されたら私は断れないだろう。
優香は両親から愛情持って育ててもらって来たことを感謝している。
両親も優香の将来を心配して、それなりに将来性のある男性を探しているようだった。
そろそろこの気持ちを封印しなければ…。
優香はそっと1人の男性を思い浮かべながら、もうこの気持ちを手放さなくてはならない事を覚悟するのだった。