政略結婚 ~全ては彼の策略~
肉が運ばれてきた為、悟が焼き始めると社長は会話を進めていく。
「今日はちょっと神崎に確認しておきたい事があったんだ。」
「…確認ですか?スケジュールなら問題なく組んでいる予定ですが、どこか不手際がありましたか?」
まだ秘書の仕事は覚えることの方が多く、悟もミスのないよう重々気を付けていたがどこかで問題があったのかもしれないと思っていると、社長は「違う違う」と笑った。
「神崎のことだから薄々感ずいているとは思うんだが、将来うちの会社を継ぐ気はないか?」
——とうとうこの時が来た。
悟は握っていたトングを元の位置に戻す。
「…それは、私が社長の引退後に代表取締役になる。という認識で間違いないでしょうか。」
「そうだ。もし神崎が実家に帰る予定なら勿論送り出すつもりだ。だが、うちの会社に残る可能性があるのなら考えておいて欲しいと思っている。」
「…私には勿体ないくらいのお話です。」
「謙遜しなくていい。神崎ほどこの業界に向いている者はなかなか見つからない。他の役員達も勿論優秀だが、私は社長の器を持っているのは神崎だと思っている。」
社長は「少しは贔屓もあるかもしれないがな。」と茶化していたが、きっと本心で悟を次期社長にと望んでくれているのだろう。