政略結婚 ~全ては彼の策略~
「何でしょう?」
悟は社長が何を求めてくるか分かった上で聞いた。
出来る限り冷静に、にやけそうな顔を引き締める。
「私は出来れば跡を継いでくれる者には優香の婿になってもらいたいと常々考えていた。あの子に少しでも遺してあげられる物があるなら遺したいんだ。」
社長は続ける。
「出来れば好きになった男と結婚させてやりたいとも思っていたが、神崎であれば優香も嫌がる事はないと思っている。神崎に心に決めた女性がいるなら無理にとは思っていないし、社長を任せる事を変えることも無い。ただの娘の惚気と思って聞き流してもらって構わない。」
社長が娘の婿になる男を社長へと考えていた事は知っていた。
知っていたから悟はここまで登りつめてきたのだ。
「…承知致しました。私で宜しければ優香さんと結婚させて頂きます。」
「…神崎……、ありがとう。本当に。」
社長は涙ぐみながら喜んでいた。
これで計画通りだ。
あとは彼女が俺を受け入れてくれさえすれば…
いや、受け入れてもらえなくとも構わない。
彼女はもう俺から逃げられないのだから。
悟の黒い笑みに社長が気付くことは勿論なかった。