政略結婚 ~全ては彼の策略~
一方通行でもいい
悟と初めて2人きりの時間を過ごした翌日の日曜日。
優香は待ち合わせの時間よりかなり早くにマンションの下で悟を待っていた。
部屋にいてもそわそわして落ち着かなかったため、コンビニに寄って悟の分の飲み物を買って戻って来たがまだまだ時間には余裕がある。
昨日はほとんど眠れなかった。
目の下のクマはコンシーラーで隠したつもりだが、大丈夫だろうか?
何度も手鏡で確認してしまう。
悟の唇の感触を思い出すだけで頬が熱くなる。
今日はきちんと話せるだろうか。
目を合わせることさえ出来ないかもしれない。
待ち合わせの10分前になった頃、悟の車が現れた。
優香の前に車が停り、助手席に座る。
「待たせて悪い。部屋にいてくれて良かったのに。」
悟が敬語じゃなく話し始めたため、ドキドキしてしまう。
心無しか今までよりも声が低く感じた。
昨日敬語はやめようと言われていたが、優香はまだ心の準備ができていないため、どう返事をしていいのか分からずおろおろしてしまう。
「…いえ、迎えに来てもらってるのに、待たせたら申し訳ない…です。」
優香の返事に悟は一瞬こちらを見たが、口元を緩める。
「優香、そんな事気にしなくていいから。」
そう言うとぽんぽんと頭を撫でられた。
…頭撫で、撫で……られたっ
興奮してしまい、コクコクと頷く。
「あと、敬語も。少しずつでも慣れて。」
「…はい。…あ、…うん。」
優香の返事に悟はまた頭を撫でた。