政略結婚 ~全ては彼の策略~


悟が帰り支度を始めたため、玄関まで見送る。

「…悟さん……」

「…そんな顔するな。また週末ゆっくりしよう。」

「……はい。」


悟が帰り1人になった優香はしばらくの間、悟との関係が進展した事に悶絶していたが、ふと気が付いた。


——最後まではして貰えなかった。


ズキンと胸が痛む。

優香もそれなりにどういう事をするのかくらいは知識として知っている。

優香が初めてだと伝えたため大切に扱って貰えたのだと思う事にした。

でないと、辛くなる。


優香が相手ではその気になれなかった…

もしそうだったとしたら、立ち直れる気がしない。

それでも
たくさんキスをしてくれた。
優しく撫でてくれた。

その事実だけで優香の心は満たされる。


一方通行でも構わない。
最初から分かっていた事だ。


悟は悟なりに優香を大切にしようとしてくれている。

愛情に見返りを求めてはいけない。

ずっと我慢していた気持ちを封印せずに済んだのだ。
この気持ちを大切にしていきたい。


優香は「また来週」と微笑んでいた悟の姿を胸に焼き付けながら眠りについた。



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