政略結婚 ~全ては彼の策略~
見えない独占
翌日、優香はいつも通り出勤した。
会社の人間は皆、優香が社長の娘であると周知しているが良い意味で気にしていない。
他の社員と分け隔てなく接してもらえている現状に優香は感謝している。
最初のうちはコネ入社だなんだと難癖つけられるのではないかと心配していたが、優香の真面目な仕事ぶりと穏やかな性格もあってか他の社員とも上手くやっていけていた。
優香は自分のデスクにつき、セミロングの髪をまとめてバレッタでとめようとしていると、次いで出勤してきた同期の友人がギョッした様子で「ちょっと!」と声を掛けてきた。
「咲希ちゃんおはよう。どうしたの?」
「それはこっちのセリフよ。とりあえず髪結ばない方がいいから!降ろしといた方がいいよ!」
「……?」
咲希の忠告の意味が分からず首を傾げていると、咲希は少し言いにくそうに耳打ちしてくる。
「首の後ろにキスマークついてる。」
驚いて、首を押さえた。
まさかとは思うが昨日悟につけられたのだろうか…
昨日以外に心当たりなんてないのだからそうなのだろう。
かぁぁっと真っ赤になる優香を見て咲希はにっこりと微笑んだ。
「お昼休みにしーっかり教えてね。」
語尾にハートマークまでついている気がする。
根掘り葉掘り聞かれて優香が困る事はないが、悟との事や社長候補として優香と結婚する事になったなど、話すにはまだ早いし、会社の機密事項かもしれない。
会社の友人には父親に相談してからきちんと話そう。
優香はそう思いながら、どこまで話してどうやって誤魔化そうかと頭を悩ますのであった。